敷地分析の図版23枚の構成
敷地分析の図版23枚の構成と、図版ごとの表示内容・使い方・限界を説明します。
概要
sitedia は、1つの敷地について敷地分析の図版を最大23枚作ります。図版の構成は、報告書の審査や報告で必ず出る質問を基準にしていて、1枚の図版が1つの質問を受け持ちます。
画面では、航空写真、建物、建物用途、建物の高さ、高層、低層、用途地域、公園・緑地・河川、樹木、地域地区、公共施設、道路、鉄道・バス、徒歩圏、街区、密度、地形・等高線、傾斜、敷地区画、敷地規模、日照時間、天空率、風配図の順に並びます。
図版の数は敷地の場所によって変わります。資料がない図版は、空の図版として出さずに一覧から外します。
| 敷地の場所 | 図版の数 | 出ない図版 |
|---|---|---|
| 東京23区・大阪市・名古屋市・福岡市・京都市 | 23枚 | なし(「樹木」は大阪市・福岡市・京都市では参考値) |
韓国版にある「竣工年代」の図版は、日本版にはありません。PLATEAU に竣工年のデータがないためです。
図版の一覧
法・規制
| 図版 | 表示内容 | 使い方 |
|---|---|---|
| 用途地域 | 法が認める用途と密度の大枠 | 敷地と周辺で用途地域が違うとき(例:敷地は商業系、北側は住居系)の高さ・配置計画の出発点 |
| 地域地区 | 用途地域に重ねて指定される地域地区と、地区計画の区域 区域の中では、用途地域とは別の決まりがかかることがある |
敷地が区域の境界にかかっていないかを最初に確認 |
| 公共施設 | 学校・庁舎/文化施設・市場・駐車場/鉄道用地の実際の敷地(OpenStreetMap) | 公共施設との関係(つなぐ・離す)を考える必要がある場所かどうかを判断 |
「公共施設」は、韓国版では都市計画施設の指定区域を描く枠です。日本では学校を都市計画施設として指定することが少ないため、指定区域ではなく実際の敷地を描いています。公園は「公園・緑地・河川」の図版に入ります。
都市組織
| 図版 | 表示内容 | 使い方 |
|---|---|---|
| 建物 | 建物の外形(図と地)、色分けなし | 都市組織の判断(小さな敷地に細かく分かれた地区か、大きなまとまりで開発された地区か) |
| 街区 | 道路に囲まれたブロックの単位 | ブロックの大きさ・形から、歩行者の通り抜けやすさと開発の単位を判断 |
| 道路 | 階層ごとの道路網(幹線道路から生活道路まで、線の太さで区別) | 車のアクセスと前面道路の条件の確認 |
現況
| 図版 | 表示内容 | 使い方 |
|---|---|---|
| 建物用途 | 住宅・商業・業務などの実際の分布 都市計画基礎調査の18分類(分類と色は国の調査要領による) |
用途地域(法)と現況(実際)が食い違う場所、つまり変化の圧力がある場所の確認 |
| 建物の高さ | 階数による5段階の区分 階数の資料がない建物は灰色(不明) |
高層・低層の基準線のあいだにある中間の高さ帯の確認(5〜8階が広く分布する地区か、9階以上がまばらに建つ地区か) |
| 高層 / 低層 | 2枚1組。それぞれ基準線1本で区分(基準は自分で指定) 高層:スカイラインと眺望の競合 低層:日照・プライバシーへの配慮が必要な層 |
高さ計画の根拠 敷地で何m以上を高層とみなすかを決めるときに使う |
環境・アクセス
| 図版 | 表示内容 | 使い方 |
|---|---|---|
| 公園・緑地・河川 | 敷地とつなげられるオープンスペース(公園は OpenStreetMap の名前のある公園) | 報告書によく出てくる「〇〇公園との緑の軸の連携」が、実際の距離で成り立つかどうかの確認 |
| 鉄道・バス | 駅とバス停の位置(国土数値情報) | 駅勢圏の論理、主な出入口の向き、歩行動線の計画の根拠 |
| 徒歩圏 | 敷地から歩いて5分・10分・15分で届く範囲(道に沿って測った距離) 高速道路・鉄道・河川は渡れる場所が決まっているため、圏域がその手前で止まる |
半径の円ではなく、実際の歩行経路にもとづくアクセス範囲の確認 |
地形・区画
| 図版 | 表示内容 | 使い方 |
|---|---|---|
| 地形・等高線 | 標高の段階区分と等高線(間隔は自動) 起伏が3m未満の平地には等高線を描かない |
斜面が配置・レベル計画を左右する敷地で、最初に見る図版 |
| 傾斜 | 傾斜の大きさを5・10・15・20°の境界で等級に分けた色面(「地形・等高線」は高さを、「傾斜」はどれだけ急かを表す) | 急な斜面がどこにあるかを確かめ、配置・造成の検討に使う |
| 敷地区画 | 都市計画基礎調査の土地利用現況調査の区画(用途が一つの範囲ごと) 登記上の筆(法務局の地図)とは異なる |
「街区」(道路がつくる大きな単位)と合わせて開発の単位を判断(細長い区画、大きな区画など) |
| 敷地規模 | 同じ区画を、形ではなく面積の等級で塗った色面 道路・河川などの区画は灰色の地にする(骨格だけを示す) |
大・中・小の敷地の分布から、都市組織と開発の単位を判断 |
渋谷駅・半径500m の「敷地区画」は822区画で、面積の中央値は約240㎡です。
環境性能
| 図版 | 表示内容 | 使い方 |
|---|---|---|
| 日照時間 | 地点ごとの1日の日照時間(日の出から日の入りまで10分おきに影を計算して合計) 冬至の日で計算 |
地点ごとに1日何時間日が当たるかの確認 |
| 天空率 | 地面から見上げたときに見える空の割合(0〜100%)。周辺の建物の高さを16方位に300mまで調べて計算 囲まれた場所(路地・中庭)は濃い紺色、開けた場所は明るい水色 |
囲まれた場所と開けた場所の区別 |
| 樹木 | 街路樹と樹冠の位置(空中写真の色から検出した推定。名古屋市は市の緑被地データ。樹種は分からない) 大阪市・福岡市・京都市は参考値 |
樹木の分布の確認(検出量は最小値) |
| 風配図 | 1年間の風向ごとの頻度と強さ(観測にもとづく統計で、シミュレーションではない) | 配置の向きの決定 |
航空写真・密度
| 図版 | 表示内容 | 使い方 |
|---|---|---|
| 航空写真 | ダイアグラムでは省いた素材感・屋上・駐車場・工事現場 | 抽象化した図版を検証する基準の図版。発表で実際の様子を見せる資料 |
| 密度 | KDE ヒートマップ(なめらかな等値線の帯)。指標は延床面積の合計か棟数を選ぶ | 開発の圧力と余地がたまっている場所の確認 |
図版の組み合わせ
2枚の図版を重ねて見る組み合わせのうち、実務でよく使うものは次のとおりです。
| 組み合わせ | 確認すること | 読み取り |
|---|---|---|
| 用途地域 × 低層 | 高い密度を認める用途地域の中にある低層の建物の分布 | 低層が広がっていれば、開発の余地が残っている土地 |
| 高層 × 鉄道・バス | 高層が駅の周りに集まっているか、駅と関係なく建っているか | 駅の周りに集まっていれば計画的な市街地、駅と関係なければ個別の開発の跡 |
| 建物用途 × 道路 | 店舗などが並ぶ道路の階層 | にぎわいのある通りの区間の把握 |
| 傾斜 × 敷地区画 | 急な斜面が1つの区画の中で終わるか、いくつもの区画にまたがるか | 区画の中で終われば敷地内のレベル計画で対応でき、いくつもの区画にまたがれば擁壁や隣地との調整が伴う |
| 日照時間 × 高層 | 影が濃い場所の原因となる建物 | 「北側の低層住宅の日照」について審査で指摘されたときに答える根拠 |
| 樹木 × 公園・緑地・河川 | 公園の範囲と樹冠が重なるか(「緑の軸の連携」という文が成り立つか) | 公園なのに樹冠がなければ広場・運動場、公園でないのに樹冠が続いていれば街路樹の軸 |
空の図版の読み方
図版がほとんど空のときは、たいていその範囲に対象が実際にないということです。この場合、空の図版そのものが報告書の根拠になることが多くあります。
| 状態 | 意味 |
|---|---|
| 等高線が描かれない | 起伏が3m未満の平地(レベル計画が要らない敷地だという根拠) |
| 傾斜がすべて最も低い等級 | 上と同じ平地を色面で示したもの |
| 樹木がほとんどない | 街路樹が実際にないか、空中写真が落葉期に撮影された場合(落葉期かどうかは「航空写真」の図版で確認) |
都心の真ん中で建物がまばらに出る場合は例外です。資料の抜けではなく、図形の境界で切れている可能性があるため、「分析半径」を小さくして作り直します。
課題別の優先図版
紙面が足りず23枚をすべて入れられないとき、課題の性格ごとに優先して残す図版は次のとおりです。
| 課題 | 優先する図版3枚 |
|---|---|
| 都心の再開発・建て替え | 敷地規模、用途地域、建物の高さ |
| 斜面地の戸建て・低層住宅 | 傾斜、地形・等高線、日照時間 |
| 駅周辺の複合開発 | 鉄道・バス、密度、高層 |
| 公園・街路の環境計画 | 樹木、公園・緑地・河川、道路 |
| 設計競技の初期リサーチ | 建物(図と地)、建物用途、航空写真 |
制限事項
傾斜:実効解像度50m
「傾斜」の図版の実効解像度は50mです。傾斜は標高の微分なので、標高の誤差がそのまま増幅されます。平滑化しないと平地にも見かけの傾斜が出るため、50m幅で平滑化した値を使います。
50mより狭い切土・擁壁は、この図版に現れません。図版の注記にある「50m 平滑化」は、この限界を示すためのものです。この表記がないと、現れなかった地形を平地と誤解するおそれがあります。
樹木:検出量は最小値
「樹木」の図版は、地理院タイルのシームレス空中写真の色から樹木を検出した推定です。樹種は分かりません。色だけで判定するため、日陰に入った木や彩度の低い木は抜けます。落葉期に撮影された地域では、検出がさらに少なくなることがあります。
検出された樹木の量は最小値として扱います。木がないと表示された場所に、実際には木があることがあります。この図版の根拠は都市ごとに異なり、ほかの都市では出ません。検出の方法と限界は樹木のガイドにあります。
徒歩圏:目安
「徒歩圏」は、歩く速さを分速80mとした目安です。信号待ち・坂・階段は反映していません。
天空率・日照時間:計算の範囲
「天空率」は樹木を反映しません。「日照時間」は半径1kmまで4mの格子で計算し、それより広い範囲では格子を大きくします(半径1.5kmで6m)。格子が大きいと細い建物の影を見落とし、日照時間が少し長めに出ます。
どちらも、高さが分からない建物は計算に入りません。このツールの結果は、日影規制などの法的な検討の代わりにはなりません。図版の「天空率」も、法令にもとづく天空率の検討とは別のものです。
不明
用途・階数が分からない建物は、薄い灰色の「不明」で残します。建物用途の資料(都市計画基礎調査。東京都 2021年・大阪市 2017年・名古屋市 2021年・福岡市 2022年・京都市 2025年)は、現地と違う場合があります。新しい建物が入っていない、取り壊された建物が残っている、用途・階数が空欄になっている、といった場合です。不明が多い区域や、現地と食い違う区域は現地確認の対象です。